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ウェアラブルが切り拓く新しいヨガの世界

Amy Birchall Writer

インドはヨガ向けウェアラブル・デバイスの開発によって、古くから伝わるヨガを世界中に広めようとしています。最先端テクノロジーと、5,000 年の歴史を持つヨガとの相性はいかに?

インド最大の複合企業の 1 つであるタタグループは、今年初め、2 つのスマートウォッチを発表。140 億ドル (約 1 兆 4,000 億円) 規模のウェアラブル・テクノロジー市場に参入する計画を表明し、世間を賑わせました。このうちの 1 つは、ヨガ向けに特化した非常にユニークなスマートウォッチです。このウェアラブル・デバイスを使うと、呼吸のパターンや集中力といったヨガに関連する指標をトラッキングできます。

しかし、ヨガの現場で、この最新テクノロジーは受け入れられるでしょうか?

オーストラリアにあるヨガ教室、Alchemy Flow でオーナー兼認定ヨガ講師を務めるクリシャン・ジョギア氏によれば、それは単に時間の問題だと言います。ヨガ教室で「Fitbit」というウェアラブル・デバイスを着用している同氏は、「時計を見ればペース配分と水分を取るタイミングも分かって便利です」と語り、こう続けます。

「ヨガ講師たちは、以前からスマートフォンをサウンドシステムにつないで音楽を流していますし、Spotify (世界最大手の音楽ストリーミングサービス) でプレイリストを作成して共有したり、タブレットを使ってレッスンの計画やアイデアを練ったり、レッスン中の写真を撮影してソーシャルメディアに投稿もしています」

しかし、すべてのヨガ講師が、ジョグジャ氏のように考えているわけではありません。

ヨガスタジオ FM Yoga を経営するマイケル・デバー氏は、生徒がこうしたテクノロジーに気を取られると、集中力を削がれ、自己認識や存在感を見出しにくくなる恐れがあると指摘。

「自分の中にエネルギーや精神を感じる力を高めていくのが、ヨガの特徴です。デバイスで記録データを出力することとは、全く逆です。テクノロジーを使うことによって、表面的なものに気をとられることになるのです」と語ります。

テクノロジーと伝統の融

とはいえ、タタグループのようなテクノロジー企業にしてみれば、ヨガは独自の新製品を売り込む可能性に満ちた新興市場です。

タタグループの広報担当者は、「当社は作業員向けリストウォッチの開発を通じてウェアラブル・プラットフォームを確立してきました。ヨガ向けウェアラブル・デバイスの開発は、コンシューマー市場向けの独自の切り口です」と説明。

ほかに新たな市場争いに参加しているものとしては、Prana 社が提供する呼吸をトラッキングするデバイス、触覚振動を通じて皮膚からフィードバックを得る Nadi X 社のフィットネス・タイツなどがあります。

横隔膜を使った呼吸と適切な姿勢を保つヨガトレーニングにより、身体をリラックスさせるのに役立つ Prana

ヨガを行う理由は人によってさまざまです。「人気を集めるヨガ向けウェアラブル・デバイスを練習に取り入れるべきかどうかは、個人が決めることです。身体の改善に関心が強い人は、ウェアラブル・テクノロジーを使ってデータを取得したいと思うでしょう。一方、ヨガの伝統や精神面を重んじる人は、そうした情報を必要としないかもしれません」とジョグジャ氏が語るように、ウェアラブル・デバイスの使用は、レッスンに出席する人が、そこで何を得たいかによって変わってきそうです。

ウェアラブル・デバイスを着けてヨガをする人

「無理に頑張って何かを成し遂げようとするのは、物事に執着しない、所有欲を持たないことを意味するヨガの概念、アパリグラハに反します。これまで受け継がれてきたものを損なうことなく、うまくテクノロジーを活用する方法を、一人ひとりが見極めるべきです」

スタジオでレッスンに参加する場合も、家庭でヨガをする場合も、姿勢の改善から適切な呼吸法の練習まで、ヨガ向けウェアラブル・デバイスの活躍シーンはさらなる広がりを見せていくでしょう。しかし、こうしたテクノロジーは、ヨガという伝統的なトレーニング法の普及を後押しすることになるのでしょうか? その影響を予測するには時期尚早かもしれませんが、ウェアラブル市場の拡大と需要の高まりは、そのきざしと言えるのかもしれません。

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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