仮想現実

いつの日か視覚障害者がはまる!没入型ゲーム機の未来

Jason Johnson Freelance writer and editor

現実世界にある支援技術 (障害を持つ方々を支援するための技術) を利用して、視覚障害者に質の高い拡張現実ゲームを体験してもらおうと、研究者たちは日夜努力を重ねています。

「Witcher* 3」や「Metal Gear Solid 5」に代表される有名なゲームは、グラフィックスの最高傑作と言えるでしょう。広大な世界の中で葉っぱや小石の一つひとつまでが、本物かと思うほど細かくレンダリングされています。

しかし、視覚を完全に失った 4,000 万人もの人々や、2 億 5,000 万人に及ぶ視覚障害者たちにとっても、これが当り前の世界になりつつあります。

没入型ビデオゲームは、プレイヤーが聴覚や触覚を使って操作する“ビデオレス”のゲームとしてイチから設計し直さない限り、視覚障害者が楽しむのはほぼ不可能です。

タッチスクリーンや、物体の角度や角速度を検出するジャイロスコープ、触覚を振動で再現するテクノロジーなどを使えば、今日普及しているゲームの多くは視覚障害者にも操作できるでしょう。しかし、インテルの研究者で構成されたある小グループは、インテル® RealSense™ カメラやウェアラブル・センサーをベースとした現実世界の支援技術を使えば、視覚障害者に仮想世界や拡張現実を使ったゲームを提供できると確信しています。

「過去 10 ~ 20 年の間、視覚障害者向けの音声付きビデオゲームについて多くの研究が行われてきました」と語るのは、インテル® RealSense™ インタラクション・デザイン・グループに所属するシニア・ユーザー・エクスペリエンス・デザイナー、チャンドリカ “シャニ” ジャヤントです。

「現在は、拡張現実や仮想現実により、今座っている部屋の形や周囲にいる人々など、現実世界の物事をゲームの中に取り込むことができます。さらに、これらを利用して、プレイ中のゲーム内で起きていることを変えられるのです」

インテル® RealSense™ インタラクティブ・デザイン・グループの研究者たち。左から、レイチェル・ケニソン、サラン・ボルデ、チャンドリカ・ジャヤント、ロバート・コックジー。

ジャヤントは、デザイン、ヒューマン / コンピューター・インターフェイス、人的要因、プロトタイピングなど、複数分野の専門家で横断的に構成される研究チームの一員です。同チームは、まるで実体験しているかのように感じる自然で直感的なインテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーの使用方法について、熱心に研究してきました。

実際、インテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーにより、人々はハンド・ジェスチャーを使って新しい PC を操作できるようになりました。これは、1999 年公開の映画「マトリックス」の中で、俳優のキアヌ・リーブスが見せた方法とよく似ています。

ジャヤントのチームは、今日普及している多くのノートブック PC、2 in 1、一体型 PC に内蔵されているものと同じインテル® RealSense™ カメラを、触覚を振動で伝えるウェアラブル・デバイスに接続。視覚障害者が現実世界に対応するうえで、コンピューター・ビジョン (視覚データを獲得・処理・解釈する機能) がいかに役立つかを示して見せました。

研究チームは、このテクノロジーによって、視覚障害者と視力を失った人々が、ゲームなどの拡張現実世界を体験する際の感触や方法を改善できる、と信じているのです。

インテル® RealSense™ Spatial Awareness Wearable のプロトタイプとワイヤレスセンサーをテストするインタラクティブ・グループのサラン・ボルデとチャンドリカ・ジャヤント。

「バイオリズムのように、現実世界にある物理環境の特性を、ゲームやデジタル空間に融合できたとしたらどうでしょうか?」とジャヤント。

例えば、「Nevermind」や「Laser Life」などの新しいサイコスリラー・ゲームは、インテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーを使ってゲーム体験を向上させています。

「Nevermind」では、インテル® RealSense™ テクノロジー対応コンピューターを使って、人の心拍数をリアルタイムに反映します。 激しい場面や穏やかな場面に応じて変化するプレイヤーの感情の揺れに、ゲームが反応するのです。 「Laser Life」では、インテル® RealSense™ テクノロジー対応コンピューターを使って、ハンド・ジェスチャーでゲームを操作できます。

「ゲームの世界が完全にデジタルであれば、カメラで何かを識別する必要はありません。しかし、ゲームが現実世界の要素を取り入れるように設計されているとなると話は違ってきます」とジャヤントは説明します。

視覚障害者の日常生活を支援するテクノロジーでゲーム体験を向上させることができれば、視覚障害者も、ゲームプレイや仮想世界に少しは馴染みやすいだろうとジャヤントは考えています。

今年開催された世界最大のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー (CES) では、インテル® RealSense™ カメラ・テクノロジーにより 3D 視覚化したロボットが紹介されました。このロボットのおかげで、ドローンは障害物を避けて自律的に飛行できるようになったのです。

会場ではジャヤントのチームが、インテル® RealSense™ Spatial Awareness Wearable の実用レベルのプロトタイプを初披露。これは、ベストに取り付けたコンピューティング・モジュールが、親指サイズの 8 つの振動センサーと無線通信する仕組みです。センサーは、胸に 3 つ、胴体に 3 つ、両足首の近くにそれぞれ 1 つずつ取り付けられています。

このウェアラブル・システムは、現実世界から得られる情報に基づいて、着用者の体に電気信号を送るように設計されています。

「このシステムは解像度が高いのが特徴です」と、インテルのテクニカル・プロジェクト・マネージャー、ダリル・アダムス。インテル® RealSense™ 研究チームのプロトタイプ試験に協力する彼は、30 年近く前に網膜色素変性 (RP) と診断されましたが、

インテル® RealSense™ Spatial Awareness Wearable のおかげで、たくさんの人々が交流するような場でも、周囲の状況を把握しやすくなったと言います。

人や物が彼に近づくと、彼の体に振動が伝わり、左右から何かが近づいてくることを知らせてくれます。

「まるで、道の途中に何かがあることを教えてくれる音波探知機のようです。でもこれは、それ以上に詳しい情報を教えてくれます」とアダムスは語っています。

インテル® RealSense™ インタラクション・デザイン・グループのディレクター、ラジーブ・モンギアは、「研究者たちは CES が終了した後に、このプロトタイプは、視覚障害者が仮想現実や拡張現実を使ったゲームを楽しむきっかけになりそうだと気付きました。私たちが利用するのは触覚です。今回の研究では、体のさまざまな部位に振動を与えることで、視覚の役割を果たしています」と説明。

彼は、現実世界で視覚の代わりとなるものを、ゲーム体験や拡張現実体験にも利用できるのではないかと考えています。

「触覚は直に伝わります」と語るアダムスも、触覚とインテル® RealSense™ テクノロジーがゲーム体験や仮想現実体験を向上させるだろうと予想する一人です。

「主人公の視点で描かれるシューティング・ゲームには、統計情報やツールがたくさん表示され、非常に高度なものになっています。 私にはそうした情報が見えないので、その時点で終了です。プレイをするたびに撃たれておしまいです」

「ゲーム分野でインテル® RealSense™ テクノロジーによる支援技術が発展するのは自然の流れだと思われるかもしれませんが、視覚で捕らえられない情報を解釈するために、触覚による言語を最適化するのは簡単ではありません」とアダムス。

彼によると、コンピューター・ビジョンと触覚をベースにすれば、世界共通語にせよ母国語にせよ、すべての言語が体のさまざまな部位を使って作成できるそうです。

「そうなれば、目が見える人々が視覚から情報を得ているのと同じように、さまざまなパターンを瞬時に解釈できるでしょう。

こうした物理環境とデジタル環境の融合により、ゲーム開発者は、現実世界で対話に使用されているのと同じ触覚フィードバックを、ゲームにも使えるかもしれません」(ジャヤント)

インテル® RealSense™ インタラクティブ・デザイン・チームに所属するサラン・ボルデとチャンドリカ・ジャヤントは、インテル® RealSense™ Spatial Awareness Wearable のプロトタイプとワイヤレスセンサーを使えば、視覚障害者に実体験に近い拡張現実とゲームを体験してもらえると信じています。

「現実世界で道を歩いているとき、道に突き出した枝があると、歩行者が着用しているウェアラブル・システムの上部にある触角モーターが停止します。 木の枝に近づけば近づくほど振動が強くなり、身をかがめ、枝を避けて通るように、着用者に合図を送ります。

また、ゲーム中に誰かが歩いてくると、視覚障害者は自分の近くを波が通り過ぎたように感じます」

現実世界のナビゲーション・システムと特定のゲームの融合はまだ実現していませんが、ジャヤントのチームはここに大きな可能性を見出していると言います。

「これにより、あらゆる人に、より実体験に近い多様な触覚フィードバックを提供できます」とジャヤント。

彼女は、チームが取り組む既存のプロトタイプ (顔認識、現実世界の物体のカタログ、視覚障害者が現実世界に対応するための支援を提供する場所や体験など) の改良を続けながら、いつの日かインテル® RealSense™ テクノロジーが活用されるであろうゲームの世界や仮想環境を、視覚障害者が鋭敏に把握し、素早く解釈できる方法を模索しています。

「まだ実現されていないテクノロジーではありますが、視覚障害者が目の見える人々と同様に仮想世界に参加できる日はそう遠くないでしょう」(ジャヤント)

 

インテル® RealSense™ 研究チームの画像を含むこの記事は、ケン・カプランの協力を得て執筆されました。

 

* その他の社名、製品名などは、一般に各社の表示、商標または登録商標です。

 

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