仮想現実

フットボール選手、360 度動画でスキルを磨く

Dan Solberg Author, Kill Screen

最先端のバーチャル・リアリティー (以下、VR) 動画を使って、プレーヤーとコーチ向けにフットボールのトレーニングを行っている元 NFL キッカーがいます。この実践的で迅速かつスマートなトレーニング方法についてご紹介します。

2015 年は、アスリートに関連したテクノロジー・イノベーションのまさに当たり年でした。 アスリート向けには、さまざまなスマートヘルメットやウェアラブル・デバイス。ファン向けには、迫力ある視点でプレーヤーの動きを楽しめるプレーヤー追跡機能やカメラアングル機能。

あらゆるスポーツに多くの新しいテクノロジーが導入されましたが、米国のスポーツ週刊誌 Sports Illustrated が 2015 年のイノベーション・オブ・ザ・イヤーに選んだのは、VR でした。

2016 年には、VR テクノロジーがメジャースポーツでさらに普及することが予想されます。 プロ・フットボール・プレーヤーは、すでに STRIVR 社が提供する新しいトレーニング・プログラムで VR テクノロジーをテストしています。

スタンフォード大学の元キッカーとコーチのデレク・ベルチ氏が 2015 年 1 月に立ち上げた STRIVR 社では、VR 動画を全米のフットボール・トレーニング・キャンプに導入する準備もすっかり整っています。

いや、むしろ、フットボール・トレーニング・キャンプを 360 度動画の世界に導いている、と言った方が正確でしょうか。

「何もない空っぽの部屋でプレーヤーがトレーニング・マシンを使って練習する場合、プレイを見ながらフットワークをシミュレーションするためには十分なスペースが必要です。

VR では、プレーヤーはまるでフィールドに実際に立っているかのような視点でプレイを見ることができ、完全にその環境に没入できるのです」とベルチ氏は説明します。

現在、一部の NFL チームと 12 校を超えるカレッジプログラムが STRIVR 社のテクノロジーを使用しています。フットボールのドリルの様子を 360 度カメラで撮影し、その映像を互いにつなぎ合わせます。その後、プレーヤーとコーチが VR ヘッドセットを装着して映像を確認すると、360 度の視点で、あらゆるプレイとあらゆるプレーヤーの動きを再現できるのです。

提供:Andy McLemore 氏、CreativeCommons、 2.0
提供:Andy McLemore 氏、CreativeCommons、 2.0

STRIVR 社のアイデアは、従来のサイドラインとエンドラインの視点よりも、もっと効果的にゲームプレイを研究できる方法があるはずだという信念から生まれました。

「ほとんどのチームは、VR 出力した画像をテレビやプロジェクターで再生し、部屋にいるコーチや別のプレーヤーが、プレーヤー本人の視点でプレイを確認します。こうすることで、VR の世界にいるプレーヤーを文字どおり『指導』できるのです」

と語るベルチ氏は、さらにクォーターバックがセーフティーを探す場面を例に挙げ、こう説明します。「クォーターバックがレフト・セーフティーを探すべきときにライト・セーフティーを探しているときは、コーチがその場でプレイを修正できます。

これが従来の映像と VR の明らかな違いであり、VR のメリットです」

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EON Sports VR などの企業もインタラクティブなビデオゲーム形式の VR をアスリートのトレーニングに導入していますが、STRIVR 社では、実際の練習風景を 360 度の臨場感あふれる動画で撮影します。このため、プレーヤーは VR ヘッドセットの中で自分の練習を「リアルに再現」し、プレイ中と全く同じ視点で練習を検証できます。

インテルの VR 戦略ディレクター、キム・パリスターは、360 度動画を使用するもう 1 つのメリットにアクセス性を挙げています。

「動画にあって、よりインタラクティブな VR 素材にないメリットは、多くの人々が利用できるアクセス性です。

360 度動画はすでに YouTube と Facebook でサポートされていますし、Google Cardboard や GearVR など、多くのソリューションが登場しています」とパリスター。

STRIVR 社は、より忠実な映像を必要とする動画では最高級の Oculus Rift ヘッドセットを採用していますが、通常は、観衆の誰もが体験でき、理解できる方法を使用しています。

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大学フットボール・プログラムのプレーヤー募集時期には、観衆は実際にプレイを体験できるでしょう。また、STRIVR 社では、アーカンソー大学をはじめとする学校の会議室やミーティングの様子を 360 度動画で撮影。これらの動画を見ることで、プレーヤー候補たちはチームの雰囲気を味わえます。

パリスターは、こうした VR の応用はお遊びだとしつつも、競争の激しい大学スポーツでは一定の効果があると言います。

「何よりお金がかかっています。チームは勝利に貢献すると思われる要素には比較的多額の予算をかけます。だからこそ新しいテクノロジーに目を向け、その効果を検証するのです」(パリスター)

STRIVR 社のプログラムを利用している 3 チーム (スタンフォード、クレムゾン、ダートマス) がカンファレンス・チャンピオンシップを制したことで、ベルチ氏は同社のテクノロジーに大きな追い風が吹いていると見ています。

STRIVR 社をはじめとする VR スタートアップ企業は、現実世界の体験やフィールド練習を VR で完全に置き換えようとしているわけではありません。しかし彼らのテクノロジーには日々のドリル練習を超える可能性が秘められています。テクノロジーを駆使することで、現在と未来のプレーヤー、コーチ、ファンは、フットボールの世界により深く入り込むことができるでしょう。

編集者より:1 月 7 日、デレク・ベルチ氏は国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー CES 2016 の「The Next Playing Field」と題したパネルで VR について語りました。

 

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