メーカー

Fab Lab で広がる「ほぼ何でも作る」精神

すべての人の創造力を開放することで、テクノロジーは世界の問題を解決できるのでしょうか?オーストラリアでいよいよスタートしたデジタル・ファブリケーション革命。その取り組みの経緯を見ていきましょう。

3D プリンターやレーザーカッターなどの多数の工作機械を備えた一般市民のための工房ネットワーク Fab Lab (ファブラボ)。世界中に広がるこのネットワークの 1 つ、西オーストラリア州フリーマントルの Fab Lab WA はある問題を抱えていました。大型のコンピューター数値制御装置 (CNC マシン) が必要なのに、ShopBot などの大手ブランド製品は高すぎて手が届かなかったのです。しかし、解決策は目の前にありました。つまり、「Fab Lab なのだから、自分たちで作ればいいじゃないか!」ということに気付いたのです。

「独自の CNC マシンの製作は、 Fab Lab のあらゆる思想を具現化する取り組みです。ShopBot は優れた製品ですが、西オーストラリア州までの配送費を考えるととても手が出ません。そこで、工学科の最終学年の生徒たちで CNC マシンを製作することにしました。プロジェクトは進行中ですが、なかなかうまくいっています。スチール加工もできますよ」と、ラボ・マネージャーのダニエル・ハームズワース氏。

こうして製作された大型の CNC マシンはその価値を証明し、チームは次の大きなプロジェクトに取り組むことになりました。今度は、フルサイズシャーシを持つ電動自動車の製作です。まだ設計段階ですが、ハームズワース氏は生徒たちの作品に期待を募らせています。

生徒たちが自身の情熱と関心をモチベーションに代えて共同で自動車を設計・製作する。それはまさに、 Fab Lab の基本精神そのものであり、「プロの設計者やエンジニアだけでなく、すべての人の創造力を開放することで、世界の問題を解決する」草の根的なエネルギーを示すものです。

Fab Lab 運動の起源

Fab Lab 運動の起源は、物理学者でありコンピューター科学者でもあるニール・ガーシェンフェルド氏による名物講座「How to Make (Almost) Anything (ほぼ何でも作る方法)」にあります。2001 年に開かれたこの講座の狙いは、マサチューセッツ工科大学 (MIT) が使用していた工業規模のレーザーカッターや加圧ウォーターカッターをさまざまな分野の学生たちに使用させることでした。講座はすぐに定員オーバーになるほどの人気ぶりでした。

この経験がきっかけとなり、ガーシェンフェルド氏はのちに最初のラボは 2003 年にマサチューセッツ州ボストン市内にある MIT 内の Center for Bits and Atoms (通称 CBA ) に誕生。今やアフガニスタンや中国、インドなど、世界中のさまざまな都市に広がっています。

また、2009 年には、Fab Lab 運動を推進するために Fab Foundation も設立されました。ここでは、あらゆる人があらゆるものを製作するために必要なツールと知識を提供。設立以来、物理表現に関する情報コンテンツの開発に力を注いできました。

lab-11
LED を一定のシーケンスで点灯させるマイクロコントローラーのプログラミングを行うという基本プロジェクト

Fab Lab から生まれたベンチャーには、ガーナの都市セコンディ・タコラディで蛍光ピンクのキーチェーンを作るプロジェクトなどがあります。ガーシェンフェルド氏は、多くの人が自宅に「製作拠点」を持つ日がやって来るだろうと考えています。電化製品の説明書を自分のコンピューターにダウンロードしたら、設計図と原料をパーソナル製作装置に投入し、ボタン 1 つで 3D プリントするといった光景が現実になるかもしれません。

地球の裏側でも広がる Fab Lab

西オーストラリア州では、2011 年後半から Fab Lab への取り組みがスタートしました。同年にドイツで開催された Hackerspace の会合に出席したハームズワース氏は、ほとんどの人が Fab Lab について話題にしていることに気付きました。そこで、オーストラリアに帰国した彼は、Challenger Institute of Technology (現 South Metropolitan TAFE (TAFE 付属語学学校)) のビーコンズフィールド・キャンパスにラボを設立。2012 年に Fab Lab プログラムを開始したのです。

ラボには標準的な機材をひととおり揃えましたが、コンピューター・ハードウェアの多くはインテル® 搭載機器でした。さらにハームズワース氏は、新しいインテル® Galileo マイクロコントローラー・ボード (IoT 向け開発ボード) をラボのいくつかのプロジェクトで使用することも検討しています。

構想が数時間で現実に

ハームズワース氏は、Fab Lab の取り組みに参加する人たちは大きく 2 つの層に分けられると指摘。「最も多いのは、CAD 設計を学び始めた高校の新卒者です。頭の中で考えていたことがほんの 2、3 時間で実際に手に取れるカタチになるという体験は、彼らを夢中にさせます。とてもパワフルな体験です」とハームズワース氏。

次に学生以外で多いのが、試作品の製作を通じて革新的なアイデアを実現している起業家たちだと言い、「Fab Lab を利用して試作品を製作している有望な新興企業がいくつかあります。私たちはそうした企業と作業を継続し、アイデアの商品化をサポートします」と説明します。

Fab Lab プログラムの成功を受けて、米国のその他の大学でも、このコンセプトを採用し、独自のプログラムを開発する動きが見られます。また、オーストラリアにも、こうしたプログラムを導入している学校が少なくとも 1 つあります。

それは、オーストラリアで初めて FabLab@School を導入した、ビクトリア州アーマデールにある Lauriston Girls’ School です。FabLab@School はスタンフォード大学教育大学院のパウロ・ブリクスタイン準教授が開発したイニシアチブであり、同校のラボは、世界中のその他の Fab Lab と同様の機材を備えています。

Lauriston2WEB
完成品を誇らしげに見せる Lauriston 校の女子生徒たち

幼稚園から 12 年生 (高校 3 年生) まで一貫して Fab Lab に取り組むという極めて包括的なアプローチを採用する Lauriston 校の校長、スーザン・ジャスト氏はこう説明します。「当校の上級生は、iPad でピラミッドを設計し、レーザーカッターで実際に作る過程を体験します。一方、初等部の生徒は、気候変動や移民問題などの疑問を投げかける場として Fab Lab を利用しています」

他の学校にもデジタル・ファブリケーションを推奨したいと考えるジャスト氏は、「世界がより多くの起業家を必要としているのなら、当校の生徒はアイデアを具現化する方法や、計画する方法、他者が使用できるモノを設計する方法をまず知る必要があります。Fab Lab は、生徒たちがこうした基本的な原理原則を理解するのに大いに役立っています」と語っています。

 

この記事をシェア

関連トピック

メーカー 教育

次の記事