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フィットネス・テクノロジーの進化をたどる

テレビのエクササイズ番組や Wii Fit を使ったトレーニング、さらにはスマート・ヨガ・パンツやウェアラブル・トラッカーにいたるまで、フィットネス向けのテクノロジーは、健康的な習慣を日常生活に取り込む上で便利な存在であり続けています。

テクノロジーとエクササイズは常に切っても切れない関係にあります。フィットネスの人気が高まったのは、フィットネスのゴッドファーザーと呼ばれたジャック・ララン氏が 1950 年代にアメリカでエクササイズ・マシンを発売して以来のことです。1980 年代にはジェーン・フォンダ氏のビデオが大流行。1990 年代になると、テコンドーやボクシングにエアロビクスや踊りの要素を組み合わせたビリー・ブランクス氏考案のタエボー、2000 年代初めにはピラティスが一世を風靡しました。

そして、今日ポピュラーなのは、筋力トレーニングやストレッチ、クロス・トレーニングです。こうしたトレーニングでは、フィットネス・バンドやスマートウォッチのようなウェアラブルなトラッキング・デバイスで活動量を計測することが一般的になっています。

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「ジョギングとランニングシューズの関係のように、テクノロジーが導入される前からフィットネスが存在した例もありますが、そうした動きによってテクノロジーのイノベーションが促進されてきたと言えます。逆のケースもあります。人々がテクノロジーを本来とは別の用途で使い始めるケースです。その良い例が、ビデオや携帯音楽プレーヤーです」と指摘するのは、歴史家で『Getting Physical: The Rise of Fitness Culture in America』の著者としても知られるシェリー・マッキンジー氏です。

小さな画面でワークアウト

映像技術がテレビやビデオ・カセット・レコーダーからテレビゲームやビデオ・ストリーミングへと進化するにつれて、フィットネスのエキスパートがその支持者に接する方法も進化してきました。

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栄養ドリンクや、ジムおよび自宅でのトレーニングはすべて、今は亡きフィットネスの大家、ジャック・ララン氏が始めたことです。彼は、1950 年代に初めて「フィジカル・カルチャー・スタジオ」を立ち上げ、テレビでフィットネス番組を作ったことでも知られる人物です。

「当時の人々は私のことをいかさま師だとか変わり者だと思っていたようです。医者たちは私の考え方に反対でした。重い物を持ち上げて体を鍛えるなんてとんでもない。心臓発作の原因になるし、性欲の減退にもつながる、と言うのです」と記した彼の回顧録が JackLaLanne.com に残っています。

それでも、ララン氏のトレーニング法は人気を博しました。以来、多くのフィットネスの指導者が独自のスタイルや様式を考案して支持者を集めました。例えば、ジュディ・シェパード・ミセット氏考案のビートに合わせてエクササイズするジャザサイズは、テレビ放映の追い風を受けて流行しました。また、ジェーン・フォンダ氏は 1982 年に自身の初めてとなるトレーニング・ビデオを発表。ビデオ・カセット・レコーダーが家庭の必須アイテムとなるきっかけとなりました。

「当時、田舎町にはジムなんてありませんでしたから、ジムはピカピカに洗練された都会への憧れ的存在でした。ジムがない町に住む人がエクササイズを試してみたいと思ったら、唯一の選択肢はビデオを買うことだったのです」とマッキンジー氏は語っています。

VHS テープや DVD のトレーニング・ビデオがフィットネスの普及に貢献する時代はとうに過ぎ、今ではビデオ・ストリーミングという形態に移行しています。トレーナーのトレーシー・アンダーソン氏の月額定額制のトレーニング・ビデオ配信や YouTube の barre 無料レッスンなどがその例です。

画面を見るだけの受動的なトレーニングだけではありません。エクサゲーム (エクササイズの要素を取り入れたゲーム)、あるいはエクササイズ・ビデオゲームの人気に最初に火をつけたのは 1999 年のダンス・ダンス・レボリューションです。さらにその人気が最高潮に達したのは、任天堂の Wii Fit がリリースされた 2007 年暮れのことでした。その 5 年後には、Wii Fit 版ダンス・ダンス・レボリューションで使うデバイスが 2,300 万個も売れてギネスブックに登録されています。

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今では、SkypeFaceTime のほか、WelloEMG Live Fitness のようなフィットネス・サイトで個人レッスンやグループレッスンがリアルタイムで受けられます。プロ・アマを問わずアスリートや大企業の従業員、軍隊などに健康・パフォーマンス向上プランを提供している Exos では、オンラインのトレーニング・ビデオを使ったり、個人データをトラッキングすることで、クライアントのフィットネス・レベルをワンランク上へと引き上げています。

フィットネス・マシンの興隆

1950 年代には早くもジャック・ララン氏によって筋力マシンが開発されました。ララン氏はスクワットのようなウェイト・トレーニングに使われるスミスマシンの発明者とされています。しかし、ウェイト・トレーニングは当時一般には受け入れられませんでした。その状況を変えたのは 1970 年にアーサー・ジョーンズ氏が開発したノーチラスマシン (フィットネス用機器の商標) の第一号となる Blue Monster でした。

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このマシンには滑車やカム (運動の方向を変える機構) が備えられており、エクササイズの際に体を動かし始めてから動かし終わるまで絶えず筋肉に負荷をかけることができました。これは、当時としては画期的なアイデアでした。らせん状に巻かれたカムがノーチラス (オウムガイ) の貝殻に似ていたのが名前の由来です。

マッキンジー氏はこう説明します。

「ノーチラスが登場する以前のウェイト・リフティングは、ちょっと近寄りがたい存在でした。ある程度の知識がないと危険だったからです。ノーチラスのおかげで、人々は急にジムに行き出し、何の予備知識もなくウェイト・リフティングのメニューをこなすようになったのです。

専用マシンが登場したことで、ジムはフィットネスのための場所となり、ゴールドジムのような会員制トレーニング・ジムが次第に人気を得ていくことになります」

また、「人々はクラブの会員になることでエクササイズに精を出すようになり、やがてフィットネスが社会現象となり、大ブームになりました」と語るのは、『Making the American Body』の著者、ジョナサン・ブラック氏です。

その後、ジムのトレンドはフリーウェイトクロスフィットのように基礎運動能力に注目したトレーニング方法に立ち戻りましたが、それでも現代のフィットネス・クラブにはランニングマシンや、サイクリング・マシン、1995 年に登場した Precor 社のエリプティカル・トレーナーのような機器が鎮座しています。エリプティカル・トレーナーは、ランニングのような有酸素運動の効果が得られる上に、関節への負担が少ない点が売りでした。これが、体のさまざまな部位を個別に鍛えてゆがみを直すピラティスマシンの登場へとつながっていきます。

ウェアラブルがアスリートにとって必須アイテムに

エクササイズはゴム底スニーカーや特殊な布が開発される以前から行われていましたが、イノベーションのおかげで、はるかに快適なものになりました。その後、肌にぴったり密着する素材が流行し、たとえジムに全く行かなくても、Lululemon (ルルレモン) のように着心地の良いブランドの服を一日中着ている人も現れました。

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「トレーニング用の服は重要なアイテムになりました。というのも、ジムの外でこういうアイテムを身につけているだけで、ジムでエクササイズを終えて帰るところか、これからジムに行ってエクササイズする人だと思われるからです」とマッキンジー氏。

これも、決して新しい現象ではありません。Nike の創業者ビル・バウワーマン氏は、今や伝説となったスニーカー Cortez (コルテッツ) をきっかけに、ランニング・シューズを競技場だけで使われるアイテムからメジャーな商品へと押し上げました。ジェーン・フォンダ氏のビデオに登場したスパンデックスは、コットンやポリエステルに特別な合成繊維を織り込むことで吸水性を高めた快適かつ丈夫な布で、大流行しました。

スポーツ用品メーカーのアンダーアーマーは、水分を吸い上げる布を商品化することで一大帝国を築きました。この布は 1986 年に登場した初の合成素材クールマックスを思い起こさせるもので、汗を吸い上げて蒸発させる素材が、さらっとして涼しい着心地を実現しています。

今日のフィットネス・ウェアのテクノロジーはさらにワンランク上のレベルに到達しています。センサーが縫いつけられたソックスや、移動距離やピッチをトラッキングできるスニーカーが登場し、心拍数や呼吸を計測できるシャツ、乳酸しきい値を計測して最適なトレーニング量を教えてくれるフィットネス・デバイス BSX Insight、ヨガのアライメント (身体の各パーツの配置) の修正に役立つパンツなどもあります。

パフォーマンスのデジタル化

エクササイズをする上で、計測できる指標があることはとても有益です。消費カロリーや減量、歩行距離、心拍数など、フィットネスの最終的な目的は数値で表されることが多いからです。そのようなデータを見たり記録できるということは、モチベーションを保つ意味でも記録を残すという意味でも大きな魅力です。

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現在のように成果を数値で表すようになったのは、1960 年代に発明された近代的な万歩計がきっかけだとする人もいます。そのテクノロジーが現代のウェアラブル・イノベーションに発展し、ランニング距離を計測できる GPS やバイオメトリクスをトラッキングできるフィットネス・バンドにつながったからです。

例えば、Basis Peak smartwatch は、小さな内蔵センサーで心拍数や体の動き、発汗、皮膚の温度、睡眠パターンを計測できます。着用している人がいつウォーキングしたり、ランニングしたり、自転車に乗ったり、眠ったりしているのかを、自動的に検知します。眠っているときは睡眠フェーズを把握することもできます。音楽をコントロールすることもできるので、わざわざトレーニングを中断してスマートフォンを取り出す必要がありません。8

「このようなウェアラブル・トラッカーは強い達成感を与えてくれます」と語るのは、Basis Peak smartwatch を開発したインテルのニュー・テクノロジー・グループ、リスト・ウォーン・イノベーションのゼネラル・マネージャー、イタイ・ヴォンシャックです。

フィットネスを始めた人がその効果を実感できるまでには数カ月かかることがあります。だからこそ、毎日の成果を計測してデータを目で見ることに価値があるのです。

「計測なくして改善なし、という言葉もあります。今ではどんなものでも計測でき、デジタル化されたフィードバックによって達成感が得られます。フィードバックがすぐに得られるようになれば、努力した後には見返りが得られるという好循環も生まれます」とヴォンシャックも語っています。

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トラッキング・テクノロジーが進化するにつれて、データ収集機能だけでなく、上達し続けるために必要なことをフィットネス愛好者に分かりやすく教えてくれる機能が求められるようになるでしょう。それこそが、今の時代のヘルス・フィットネス業界における最大の課題かもしれません。

「この分野の製品で大切なのは、ユーザーが充実した人生を送るのに役立つかどうかだ」として、ヴォンシャックはこう続けます。

「歩数や睡眠を計測できること自体はそれほど重要ではありません。生活習慣を変えて、より健康に、より幸せになろうとする人をサポートする存在になることが重要なのです。人が正しいことをしているとき、それが客観的に正しいということを示して、背中を押してあげられるような存在になれたら、ウェアラブルは人々にとって手放せないアイテムになるでしょう」

 

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