サイエンス

自律型無人探査機 Juno が木星に最接近!

Walden Kirsch Intel Communications and iQ Contributor

NASA の自律型無人探査機 Juno (ジュノー) が、Wind River 社のソフトウェアを使用して、木星に最接近。科学者を未知の世界に誘います。

Juno は、人工物体としては史上最速の時速 275,000km というスピードで宇宙空間を突き進んでいます。先日、強力な重力に引かれながら木星に最接近。逆噴射ブレーキをかける瞬間が迫っていました。

逆噴射は慎重に行う必要があります。

NASA 提供のこの木星の画像は、2000 年のフライバイ (惑星のすぐ近くを通り過ぎること) 時に探査機 Cassini (カッシーニ) が撮影したものです。Cassini は、ガスでできたこの巨大な惑星にあと約 965 万 km のところまで接近しましたが、Juno はそれよりもさらに接近。その距離は、木星の雲の上空わずか 4,800km です。

5 年をかけて太陽系内の宇宙空間を回りながら重力加速 (重力を利用して加速すること) した NASA の探査機 Juno の移動距離は 27 億 km。正確に 35 分間エンジン噴射を行い、ついに木星と 60 個もの衛星を 53 日周期で楕円を描きながら巡る極軌道に入りました。

今回の探査は、前回に比べて 10 倍も木星に近い軌道を回るため、太陽系最大の惑星である木星の謎を解明する足がかりとなることが期待されています。木星がバスケットボールだと仮定すると、Juno はボールの表面からわずか 0.85cm という非常に低い高度で飛行していることになります。

この偉業に対し最大の賛辞を贈られたのが、Juno に使用されたソフトウェア VxWorks (組み込みデバイス向け OS) の開発チームでした。

コロラドから電話取材に応じ、「うまく動作したことに非常に満足しています」と語ったのは、インテル子会社である Wind River 社のベテラン航空宇宙エンジニア、コーリー・ハッチンズ氏です。彼のチームが開発した VxWorks は、米国の独立記念日である 7 月 4 日ぴったりに Juno を木星に到着させるのに貢献したのです。

太陽系内を弧を描いて移動する Juno は、自律航行する無人探査機ですが、そこには自律航行でなければならない事情がありました。地球からの一方通行の無線コマンドは、光と同じ速度で伝達されますが、それでも木星に到達するまでには 48 分もかかります。そこは、人の手の及ばない、はるか彼方の世界なのです。

写真提供:NASA

このため、Junoの航行にあたっては、Wind River 社のソフトウェアがガイダンス、ナビゲーション、データ伝送、エンジン噴射、通信など、あらゆる重要な任務をこなしました。

リアルタイム OS である VxWorks は、10 分の 1 秒以下の高い処理速度と究極の信頼性を必要とするアプリケーション向けに特別に開発されたものです。航空宇宙用途以外にも、組み立てラインのロボットから農業機器、家庭用のワイヤレスルーターまで、数十億台ものデバイスを動作させるのに使われています。

宇宙空間で軌道エンジンを今まさに点火しようとしている重要な瞬間に、探査機に取り付けられた装置が少しでも誤動作しようものなら、Juno は哀れにも木星軌道を外れて星間宇宙に飛び出し、10 億ドル (約 1,040 億円) もの物体が宇宙ゴミと化していたかもしれません。

「Juno は完全な自律航行探査機です。だからこそ、完璧に動作しなければならないのです」とハッチンズ氏は強調します。

VxWorks は、BAE 社が PowerPC 750 をベースに特別に開発したコンピューター RAD750 上で動作。この RAD 750 は、人工衛星や宇宙船向けに耐放射線能力が強化されています。

NASA の計算によると、Juno がミッション全体でさらされる放射線量は歯科用 X 線の 1 億回分です。そのため、Juno の重要な電子部品はすべて厚さ約 1.27cm のチタン製ボックスに収められ、木星の猛烈な放射線帯から守られています。

さらに、驚異的な「軽さ」も VxWorks の特徴です。例えば、Windows 10 では、OS 用として PC 上に 20 GB のストレージが必要です。一方、VxWorks OS は、その 20,000 分の 1 のサイズ、つまり 1 MB しか必要としません。これは、一般的なスマートフォンの写真より少ないデータ量です。

写真提供:NASA

7 月 11 日にエンジン燃焼を成功させた Juno は、木星の色鮮やかな雲を見下ろす軌道に入りました。水素、ヘリウム、メタン、アンモニア、硫化水素、その他の有害物質が渦巻く、まるで魔女が作る秘薬のような大気です。

Juno から感度良好な発信音が 48 分をかけて到着したとき、カリフォルニア州パサデナにある NASA のジェット推進研究所で、フライトエンジニアと科学者たちが歓喜に酔いしれ、踊り、ハイタッチで盛り上がる様子がライブ・ストリーミング配信されました。ジェット推進研究所よりも注目度は低かったものの、Wind River 社の関係者の喜びもひとしおでした。

今回のミッションでは、まず 4 トンのハイテク探査機の設計から始まり、太陽系内の広大な宇宙空間を飛行させ、独立記念日当日に木星という未知の世界に到着させたわけです。大変な偉業です。

また、ソフトウェア開発もロケット科学の一領域であり、成功を大きく左右する要素であることは間違いありません。

編集ノート:VxWorks は、火星探査機のMars Curiosity (マーズ・キュリオシティー)Opportunity (オポチュニティー) のミッションでも使用されています。Juno が木星に再接近した後、VxWorks は 53 日間の楕円軌道に入る際に活躍。『The New York Times』紙は、Juno が 8 月 27 日に木星に再び接近し、待望の科学データを取得するためにカメラや各種検出装置を作動させると報じています。また、10 月 19 日にはエンジンに再び点火して 2 週間の軌道に入り、ガスでできたこの巨大な惑星についてさらに貴重なデータを収集する予定です。

トップ画像提供:2010 年にカリフォルニア州NASA ジェット推進研究所で組み立てられる探査機 Juno:NASA

※文中に記載の金額は、日本語原稿執筆時の為替レートで計算しています。

 

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