仮想現実

地球の裏側まで広がる乙女ゲーム

Kill Screen Writer

乙女ゲームとは、女性を主人公とした女性向け恋愛ゲームの総称で、恋愛ビジュアルノベルとも呼ばれるジャンルですが、日本以外ではあまり支持されていません。恋愛シミュレーションに馴染みのない文化圏の女性にはアピールが弱く、ゲームの主人公とストーリーが日本的な感覚で描写されているため、他国向けに翻訳された段階でゲームの魅力が失われてしまうようです。このため、代表的な乙女ゲーム作品であっても、男性向けの作品に比べてニッチなプレーヤー層しか獲得できないのが現状です。しかし、一部の乙女ゲームがその現状を打破し、欧米諸国への進出の足がかりをつかみつつあります。

欧米で受け入れられている数少ないゲームとしては、ルイス・キャロルの古典童話を恋愛物語として再解釈した「ハートの国のアリス (Alice in the Country of Hearts)」や、主人公が父親を探すために男性に扮する「薄桜鬼 (Hakuoki)」、主人公が過去の記憶を失った状態で目覚める「アムネシア・メモリーズ (Amnesia: Memories)」などがあります。注目すべきこうした作品は、独自の作風や多彩なストーリー展開が、文化の壁を越えて多くのプレーヤーやレビューアーから評価されています。特に、「アムネシア・メモリーズ」では、英語圏プレーヤー向けの巧みなローカライズが高く評価されています。

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このように欧米諸国のプレーヤーにアピールする手法は、「Purrfectly Ever After」という乙女ゲームを手本にしています。このゲームは、泥棒ネコが少女に変身し、新たなシティーライフを送りながら実際の人間として生きようとするストーリーです。欧米プレーヤーをメインターゲットとした「Purrfectly Ever After」の開発チームは、「日本的な乙女ゲームのギャップを埋め、日本的すぎない視点と筋書きを持つゲーム」だとしています。

Purrfectly Ever After」を開発した Weeev の創設者、スー・アン・チャン氏は、こう語ります。「乙女ゲームは日本で人気を集めているのですから、乙女ゲームに関心を持つ人々が、日本の ACG (アニメ、コミック、ゲーム) 文化の熱烈なファンであっても不思議はありません。ゲームのコンセプトだけは日本で設定しますが、それ以外はできるだけ万国向けにしたいと考えています」

また、欧米諸国のプレーヤーにとって、文化や環境の違いが最大の壁だとして、「一部の乙女ゲームは、英語にローカライズされてはいるものの、日本文化の要素はそのままなのです」と指摘します。

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例えば、部屋に入るときに靴を脱ぐ習慣や、「壁ドン」(相手を壁に押し付けるロマンチックな行動) などが、字幕制作や吹き替えの作業で修正されることはありません。こうした文化的な表現は、欧米諸国のプレーヤーにはそれほど好まれず、逆に敬遠される要素にもなるのです。

通常、恋愛ビジュアルノベルに登場するノンプレーヤー・キャラクター (ゲームに登場するキャラクターのうち、プレーヤーが操作できないもの) は、クールなタイプ、シャイなタイプ、インテリジェントなタイプ、ツンデレタイプなど、日本の伝統的なアニメルールの範疇にきちんと収まっていますが、乙女ジャンルの新しい作品では、欧米諸国のプレーヤーを意識して、このルールにとらわれないキャラクターを設定しています。

Weeev が実施したアンケートによると、ファンの大部分は、1 つしかないシンプルな筋書きより、ある程度複雑な筋書きの乙女ゲームを好むことが分かっています。また、乙女ゲームメーカー大手のアイディアファクトリー株式会社で開発を統括する東風輪 敬久 (コチワ ノリヒサ) 氏は、海外ゲーム情報サイト「Siliconera」のインタビューでこうした傾向について語り、ゲームプレイそのものより筋書きを重視していることを明らかにしています。

特に、欧米プレーヤーを意識して、主人公にもキャラクターの複雑性を持たせています。チャン氏は、日本の乙女ゲームでは、プレーヤーが自分の個性を投影できるように白紙状態のキャラクターが好まれますが、ヨーロッパと北米のプレーヤーを想定して開発されたゲームでは、より複雑な生い立ちの女性が主人公として描かれる傾向があると分析しています。

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「欧米のプレーヤーは、乙女ゲームによくある主人公ではなく、確固とした個性を持つ主人公を好みます」とチャン氏。また、「Purrfectly Ever After」のプレーヤーたちは、女主人公のパステル (Pastel) を、ネコから人間に変身した強い意志を持つ少女であり、一族のリーダーを務める正義のヒーローとして肯定的に捉えていると指摘しています。

欧米プレーヤーに最も人気のある「アムネシア・メモリーズ」でも、プレーヤーは、記憶を失った主人公のために全く新しい個性を作り上げることができます。ゲームが進むにつれ、各段階での意思決定に応じて主人公のキャラクターがゆっくりと確立されていき、ゲーム展開に深みが増していくのです。

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「現在、欧米プレーヤーの間には、乙女ゲームのブームの兆しがあり、乙女ゲームに対して以前より寛容な姿勢が見られます。乙女ゲームのファン層と展開エリアの拡大とともに、世界中でこのジャンルを体験する機会が増え、認知度も高まっていくでしょう」とチャン氏は語っています。

イメージ画像の著作権は Idea Factory/Design Factory に帰属します。無断での引用、転載を禁じます。Amnesia は Idea Factory の商標です。寄稿者:Jess Joho

 

 

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