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唾液でがんを発見! AI で創り出す医療革命プロジェクト

テクノロジーのチカラで、世の中にイノベーションを――。福島県会津若松市に拠点を置くベンチャー企業「Eyes, JAPAN」は、社会の課題を解決する、革新的プロジェクトの数々を進めています。中でも注目を集めるのが、人工知能(以下 AI)を使った唾液による癌の早期発見プロジェクト。唾液の簡易検査で早期にがんを発見し、多くの命を救う。このプロジェクトは医療の革命と言っていいほどのインパクトを秘めています。以前の記事で紹介した「FUKUSHIMA Wheel」に続き、 Eyes, JAPAN 代表の山寺純氏にお話を伺います。

唾液を AI で分析し、がんの兆候を掴みとる*

唾液中の物質「サイトカイン」を分析し、通常ではわかりにくい「がんの兆候」を簡易な検査で見極める。それが、このプロジェクトの概要です。「サイトカイン」とは、免疫システムをつかさどる細胞から分泌される、たんぱく質の総称で、ストレスや生活習慣によって大きく変わります。300 種類ほどのサイトカインのうちの数十種類のサイトカインでは、がんに罹患(りかん)した際に独特の変化が現れます。 サイトカインの変化に関する 20 万件におよぶ医学論文から、自然言語解析させた結果を機械学習することで AI でがんの罹患が作り出す変化の具合いをパターン化。そのパターンと唾液の分析結果とを照合することにより、さまざまな種類のがんの兆候を捕捉できるようになりました。

このプロジェクトが実現化すれば、肺がんや大腸がんのような、これまで侵襲的な検査や治療が必要とされてきたがんでも非侵襲的かつ早期に発見することができるようになります。検査の数が積み重なりデータが蓄積されていくことで判定精度の向上も期待できます。

しかし、蓄積された医療情報をどう管理するかが問題になります。そこで Eyes, JAPAN が採用したのはフィンテックの分野で脚光を浴びるブロックチェーン・テクノロジーでした。「分散型台帳」とも言われるブロックチェーン・テクノロジーを利用することで改ざん対策や完全性を極限まで追求します。

AI やブロックチェーンなど、新しいテクノロジーの長所をしっかりと見極め、積極的に採用していく姿勢は彼らの挑戦し続ける姿勢と重なります。

“誰にでもできること”はやらない

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「Eyes, JAPAN」では、唾液のセンサーを開発する大学や臨床研究をする研究機関などと一緒に AI の開発を進め、福島県の復興事業「第6次ふくしま医療福祉機器開発事業費補助金」にも採択されています。

今でこそ、大きな注目を集める彼らですが、もともと医療に関しては門外漢。このようなプロジェクトに着手したのは、技術者としての矜持があったからでした。

IT で社会を良くしたいと願う彼らは、2000 年頃から、高い技術力を有していた IT やセキュリティー対策を医療分野にも転用しようと試みます。しかし、当時の日本国内では医療と IT の融合や情報の管理に対する危機意識が薄かったこともあり、門前払いされ辛酸を嘗める結果に終わりました。

「あれから時間が経過し、いまや病院にもさまざまなテクノロジーが導入され始めています。しかし、IT をとことん追いかけて来た立場からすると決して新しいものではないし、インパクトも大きくありません。私たちはイノベーションを起こし、社会に貢献したい。だからこそ、他の技術者にはなかなかできない、がん検査という医療のど真ん中にチャレンジしてやろうと思ったんです」(山寺氏)

社会への貢献度が高いフィールドであったこと。そして、何より生来の負けず嫌いであったこと。それらが、山寺氏をこのチャレンジへと突き動かしたのです。

同プロジェクトは、手始めに『診断サポート』という検査サービスの位置づけでの具体化を狙っています。がん検診の頻度は年に一度あればよいほう。しかし、簡単かつ安価に受けられるようになれば、早期にがんを見つけられる可能性が高まります。「例えば、ショッピングの合間や新幹線に乗っているくらいの短時間で簡単に検査結果が出れば、便利ですよね。今後も AI の精度を高め、医療を支える革新的なプロジェクトに育てるつもりです」(山寺氏)

誰にもまねできない技術で世の中を良くしたい

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山寺氏の作業スペースには、これまで利用したコンピューターから取り出したチップが、まるで宝物のように大切に保管されていました。インターネット黎明期の 1995 年、日本初のコンピューター単科大学・会津大学の通訳翻訳員であった山寺氏と、学生たちによって設立された「Eyes, JAPAN」。まだ、Eメールすらも浸透していない時代に、次々と新たな技術に触れることで、自分たちの人生は劇的に変化したと言います。これらのチップたちはまさにその劇的な変化を共にしてきた戦友とも言えるもの。大切に保管する姿勢からはテクノロジー、そしてイノベーションに対する深い敬意の念を感じさせます。

Eyes, JAPAN は創業間もないインターネット黎明期に、毎日のようにウェブサイトを作り続けていました。1993 年当時、インターネットの黎明期のころ、実は東京に関する情報より会津に関する情報の方がネット上に多かったのは、彼らの仕業とのこと。「ずっと、未来だけを見つめ続けてきました。だからこそ、『今ここにないモノ』を創りあげていきたい。世の中をよりよく変えたいという想いが強いのでしょうね」と山寺氏は過去を振り返りながら語りました。

誰にもまねできない技術を生み出すこと。そして、見えない未来を自らの手で創りあげること。彼らが実現しようとしている未来は、私たちに大きな喜びと幸せを届けてくれるに違いありません。「人工知能を使った唾液によるがんの早期発見プロジェクト」はまさにその先駆けとして動き出しており、近くテストトライアルなどを計画しています。

ギークが集う会津若松から未来が動き出す

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未来を創造するイノベーション集団「Eyes, JAPAN」の社内は、若いエンジニアたちの活気と、大小さまざまなロボットやインテル® Edison™ テクノロジーを利用したラテアートマシーンなどユニークなものが並び、未来を感じさせるに十分な雰囲気がありました。会津若松では、インテルも「IoT ヘルスケア事業に関する取組」で協力している「会津若松市まち・ひと・しごと創生包括連携協議会」が結成され、未来に向けた ICT 活用によるまちづくりが進められています。

2011 年の東日本大震災やその風評被害などを乗り越え、一歩ずつ着実に復興、そして復興以上の変貌を遂げようとしている会津若松。今後、この街が描いていく未来に期待が集まります。

 

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