ファッション

ファッション・テクノロジーを牽引する 4 人の女性たち

好みの服を調達できるアプリから、オリジナルの服をリアルタイムで売り込むビジネスまで、テクノロジーはこれまでのファッション業界の常識を変えつつあります。

人が近づくと蝶が飛び立つドレスがイブニングドレスの仲間入りをし、スポーツブラが汗をかいた体を自動的にクールダウンし、カクテルドレスが着用者の状態を本人よりも正確に読み取るようになるなど、ファッション業界のイノベーターたちはさまざまな場面で活躍し、業界全体を新しい次元へと牽引しています。

ファッション業界でテクノロジーが担う役割は、かつてないほど大きくなっています。ニューヨーク・コレクションから始まり、ロンドン、ミラノ、パリへと続く世界のファッション・ショーにも、そのトレンドがはっきりと見てとれます。

もっとも重要なメッセージや電話の呼び出しをアラートで伝えてくれる指輪から、好みのコーディネートを手伝ってくれるアプリまで、ファッション好きな人にとって、最新アイテムを購入、着用できる機会にこれほど恵まれている時代はなかったでしょう。

「ファッション・デザイン、販売店、そしてテクノロジー。この 3 つが交わる場所で、業界をがらりと変えるような素晴らしいイノベーションが生み出されています」と語るのは、ジャッキー・トレビルコック氏です。彼女がマネージング・ディレクターを勤める New York Fashion Tech Lab (NYFTL) では 12 週間のプログラムを行っており、ファッション・テクノロジーのスタートアップ企業が大手販売店や業界の専門家、起業家、投資家とつながる機会を提供しています。

「オンライン、オフラインを問わず、あらゆる業界のさまざまな場面にテクノロジーをどう融合させるべきか。この課題に取り組むことが重要になってきています」

Snap Fashion App
ファッション・アプリ「Snap」

こうした変革に女性たちが積極的に参画しつつあります。そこで NYFTL は、この春、女性が中心となって活躍するファッション・テクノロジー企業だけに注目したプログラムをスタートさせようとしています。 ここで、イノベーションを生み出す 4 人の女性を紹介しましょう。いずれもウェアラブル・テクノロジーの最前線に立ち、業界と次世代の若者にインスピレーションを与えている女性たちです。

女性の中には、スマートジュエリーがもう少しさりげなくて上品だったら欲しいのに、と思う人がきっといるはずです。 そこに着目したのが Ringly 社です。ウェアラブル・テクノロジーのスタートアップ企業である同社は、UX デザイナーのクリスティーナ・マーカンド・ダビニョン氏が「シンプルであること」をコンセプトに立ち上げた会社です。

Ringly 創業者兼 CEO のダビニョン氏は、若い女性向けの情報サイト Cambio との最近のインタビューでこう語っています。
「手が離せないときや人と話しているときに、決して邪魔することなく、一番大切な情報を知らせてくれるものが欲しかったのです」 その結果、宝石のようなスマートリングが誕生しました。このリングは、iOS と Android の両方に対応。小売価格は 195 ドル (約 22,000 円) から 260 ドル (約 29,000 円) です。

電話の呼び出しやメッセージ、スケジュールのリマインダー、Facebook をはじめとするアプリなど、指輪にアラートを通知する内容は自由にカスタマイズできます。電話がかかっていることを通知するバイブレーションやフラッシュもカスタマイズ可能です。つまり、ベビーシッターあるいは上司から電話がかかってきたときにだけ通知するよう設定することもできるわけです。

マーカンド・ダビニョン氏は、ウェアラブル専門サイト Wareable とのインタビューでこう説明しています。
「指輪には、ネジやプラスチック素材、ボタン、USB ポートを一切使わないようにしました。 一見、ただの指輪にしか見えません。実際、カクテルリングと一緒に並べてみても、たぶん見分けがつかないと思います。そこがこの製品の魅力の 1 つです。テクノロジーを主張しないようにすることが、デザインする上で非常に難しかった点です」

特許出願中のこのテクノロジーは、確かに見た目だけでは分かりませんが、指輪の中ではしっかりと機能しています。黒オニキスやエメラルドなど全 8 種類のバリエーションがあるこの指輪は、ユーザーのスマートフォン上の Ringly アプリと Bluetooth で通信するのです。また、付属の指輪ケースは充電器としても機能します。

Wareable とのインタビューでダビニョン氏は、指輪に仕込まれたバイブレーション・モーターのことを「用事があれば肩をポンとたたいてくれる個人アシスタントのような存在」と表現しています。

  • ジェニー・グリフィス氏

ジェニー・グリフィス氏が初めてアルゴリズムのプログラミングを手がけたのは、イギリスのブリストル大学でコンピューター・サイエンスを学んでいたときのことです。その経験はやがて、彼女が 25 歳になったときにスタートアップ企業 Snap Fashion 社を立ち上げるきっかけとなりました。

Jenny Griffiths_headshot

現在、同社では 1 カ月当たり 250,000 件を超える「スナップ写真」を扱っています。最近開催された Cisco 社の British Innovation Gateway Awards では、300 社の中から最優秀賞を獲得。これはイギリスで最も優秀なテクノロジー・スタートアップ企業を見つけ出そうという意図で創設された賞です。 Snap Fashion 社の Web サイトとアプリには、ファッション雑誌に載っている写真のイメージと一致する商品がリスト表示され、その場でオンライン購入できます。

「私自身、自分の好みの服を見つけるのにいつも四苦八苦してきました。 画像で検索するのは私にとってごく自然なことだったのです」と、ファッション・サイトの Drapers でグリフィス氏は語っています。

好きな服の画像をアップロードすれば、あとはソフトウェアが 250 以上のオンラインショップからその画像と同じアイテムまたはそれに近いアイテムを取り扱っている店を見つけてくれます。アプリでは、ウィッシュリストを作っておき、そのアイテムが販売されたときに通知するように設定することもできます。

IT プロフェッショナル向けサイト Computer Weekly.com のインタビューで、グリフィス氏はこう説明しています。
「画像検索とはコンピューター・サイエンスの技術の 1 つで、コンピューターに画像の認識方法を教えることです。画像を認識するという行為は人間にとっては自然なことですが、コンピューターにとっての画像は単に大量のピクセルが並んでいるだけのものに過ぎません。ですから、人間がプログラムを使って、コンピューターに色や形、さらにはテクスチャーまで認識できるように教え込むわけです」

服のコーディネートを自撮りして記録に残したことがある人なら誰でも、Cloth がどんなアプリなのかを説明しなくても分かるでしょう。 iOS 対応のこのアプリは、ユーザーが撮った服のコーディネート写真を保存し、分類する機能を持っています。

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Forbes.com のインタビューで、ファッション・デザイナー兼 Cloth 共同開発者のレイ・サーナ氏は、「すべてのコーディネートを 1 カ所でまとめて見られるようにしておくことが大切なのです。外出の目的や天気に応じて、その日の最適なコーディネートを Cloth が教えてくれます」と語り、さらにこう続けます。

「自分のコーディネートがしっかりと整理されている状態を見ることで、自分ならではのスタイルが作られていきます。そうすると自分のワードローブにどんなアイテムが欠けているのか把握できますし、手持ちのアイテムから新しいコーディネートを編み出すきっかけにもなります」

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レイ・サーナ氏

Cloth (2015 年度の NYFTL に参加) を使えば、現在の天気に最適なコーディネートを見つけたり、初めてのデートや就職の面接の前に自分のコーディネートについて友達の意見を聞くこともできます。 また、ソーシャルメディアで自分の好きなイメージを探したりコーディネートを共有することも可能です。

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このアイデアはどこかで聞き覚えがある、とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それもそのはず。Forbes.com も指摘しているように、映画「クルーレス」に、これを彷彿とさせる印象深いシーンがたくさんあるのです。ファッション好きの人にとって最高のシーンはやはり、主人公の少女シェールがコンピューターで仮想クローゼットをスクロールしている姿でしょう。

  • ヴェロニカ・サンセブ氏

ヴェロニカ・サンセブ氏は、ソーシャルメディアで移り変わりの激しいファッション・トレンドを捉えて、ブランドビジネスに役立ててもらおうと思い立ち、inSparq を共同で立ち上げました。同社のサービスによって、販売店や各社ブランドは、ソーシャルメディア上でトレンドとなっている商品をリアルタイムで見つけ出してマーケティング活動に活かすことが可能になります。

Veronika Sonsev

「inSparq は、提案機能を持ったエンジンです。その提案に説得力を持たせるために、ソーシャルメディアの Facebook や Twitter、Pinterest、Google+ で共有されている話題を横断的に探ります。

トレンドとなっている商品が特定できると、次に販売店やブランドにその情報を渡して、オンサイトや電子メール、最近では広告を使ってマーケティング活動が行えるようになります」と、New York Business Journal でサンセブ氏は説明しています。

inSparq 社は 2015 年度の NYFTL プログラムに参加したのをきっかけに、たくさんの人の目に触れて飛躍する機会を得ました。

「私たちが NYFTL に参加したのは、大手販売店に私たちのことをもっと知ってもらいたかったからです。Kate Spade、Alex & Ani というメンターに接することができ、私たちにとっては信じられないくらい素晴らしいプログラムでした」とサンセブ氏。

プログラムが終了してまもなく、NYFTL Demo Day に参加したサンセブ氏は、デジタル・テクノロジーを事業とする Adiant Media 社の人物と出会いました。それが、inSparq の買収 (額は非公開) につながったのです。

inSparq の買収後、サンセブ氏は Women in Wireless という組織を立ち上げました。この非営利組織は、モバイルやデジタルメディアで活躍する女性リーダーの促進と育成を目的としており、スタートアップ企業数社のメンターとしての役割も担っています。

「現在、XRC Labs、Dreamit、ERA でメンターとして活動しており、その他 FashionDigital の諮問委員、ソーシャル・シンクタンクの Remodista のリテール委員も務めています」と語るサンセブ氏は、小売業界のテクノロジー・スタートアップ企業に、マーケティングや戦略、ビジネス開発に関するアドバイスを行っています。「今まで自分が学んできたことを若い企業に伝えて役立ててもらえるのは充実感があります」(サンセブ氏)

おそらくクリエイティブな起業家たちは Women in Wireless のような組織の支援を活用しつつ、斬新なアイデアをスマート・ファッションに投入し続けるでしょう。将来、着用者の度肝を抜くようなファッションがお目見えする日が来るかもしれません。

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