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3D プリント・テクノロジーがランウェイを変える

合成皮革とプラスチックでできたコスチューム「Eagle Borg (イーグルボーグ)」。この作品を制作したファッション・デザイナーのモニカ・ヴァヴロヴァ氏は、いまやチェコ共和国における 3D プリントの先駆者的存在です。

デジタルの未来へ一歩踏み出した途端、デザイナーのモニカ・ヴァヴロヴァ氏は、自分が急速に拡大するファッション・テクノロジーのトレンドの最前線に立っていることを認識しました。 コンピューターと 3D プリンターを駆使してコスチュームのアイデアを具現化したのを機に、ヴァヴロヴァ氏には、デザイナーとしてのインスピレーションが沸々と湧いてきました。SF をテーマとする次の作品に、テクノロジーをさらに深く取り込みたいという思いをさらに強くしたのです。

2015 年 10 月、ヴァヴロヴァ氏は、チェコ共和国で初めて 3D ファッション・テクノロジーをファッション・ショーで使用したデザイナーの 1 人となりました。 白と金色で輝かしく彩られたイーグルボーグのボディースーツは、ライクラ (伸縮性を持つ合成繊維) と合成皮革を素材として使用。重力から解き放たれたヘルメットや装飾的なショルダーカバーなど、3D プリンターで造形された小物が異彩を放っています。

be3D 社のプリンターを使った今回の経験を振り返り、「3D プリントのトレンドはぜひフォローしたいし、今後のファッション・デザインにも採り入れたいですね」とヴァヴロヴァ氏。

Monica Vaverová

イーグルボーグは、歌手の Markéta Poulíčková 氏のために制作され、Prague fashion show Fashion.stl で発表されました。stl は StereoLithography の略で、3D プリンターで使用されるデジタルファイル形式です。

世界中のランウェイで急速に拡大しつつあるファッション・テクノロジーのトレンドを、イーグルボーグが示したと言えるでしょう。 このほかにも、建築家のザハ・ハディッド氏と UN Studio のベン・ファン・ベルケル氏が 3D プリンターで造形した女性用パンプスから、アヌック・ウィップレヒト氏のロボットから着想を得たスパイダードレス、Chromat によるバイオミミクリーを取り込んだアドレナリン・ドレスまで、意欲的なデザイナーたちが、新たなツールと素材を駆使してオリジナリティーの高い作品を生み出しています。

Monica Vaverová _eagle_borg_full

3D プリントによってテクノロジーをファッションに取り込めるようになり、デザイナーはスケッチを実物へと変換できるようになりました。ヴァヴロヴァ氏の作品が示すように、3D ファッション・テクノロジーは、誰もが自分の服やコスチュームを制作できるという新たな可能性を衣服の世界にもたらします。これは SF 映画やマンガでしか考えられなかったことでしょう。

マイケル・シュミット氏は 2013 年、バーレスク・ダンサーのディタ・フォン・ティース氏のために、有名な 3D プリントドレスを制作。スワロフスキーのクリスタルをあしらったこの黒いローブは、レディー・ガガビョークなどの世界的なセレブが身にまとう 3D ドレスデザインにも、新境地を切り開きました。 しかし、3D ファッションに最初にスポットライトを当てたのは、他ならぬ、オランダ人デザイナーのイリス・ヴァン・ヘルペン氏です。それは、彼女のコレクション「Escapism」が発表されたときのことでした。 彼女の作品は、Time magazine 誌の 2011 年度トップ 50 の発明品に選ばれました。

Monica Vaverová _eagle_borg_catwalk

現在、3D プリントは、オートクチュール・ドレスからパーソナライズされたランニングシューズにいたるまで、ファッション業界ではごく一般的な手法になっています。 3D プリントは、多くのファッション・デザイナーにとって、アイデアを素早く安価に具現化するためのツールです。

ヴァヴロヴァ氏の場合は、SF とファンタジーに対する興味がきっかけとなって、ファッション分野でその才能が開花しましたが、新しいデジタルツールは、多くの若きデザイナーたちが新たなファッション・トレンドを切り開き、自分の会社を立ち上げるのにも一役買っています。

「私は新しいことを試すのが好き。特に、アート・プロジェクトや SF、未来的なことに興味があります」と語るヴァヴロヴァ氏も、自身のブランドである MIMO を立ち上げました。

イーグルボーグを制作するために、ヴァヴロヴァ氏は YSoft be3D 社の Martin Žampach 氏と Tomáš Kubata 氏とパートナーを組み、自宅やオフィスで使用するために開発されたコンシューマー向けの 3D プリンター DeeGreen を導入。

「3D プリントを学ぶのは、とても刺激的な経験でした」と彼女。

Monica Vaverová _eagle_borg_sketch

構想からコスチュームの完成までには 4 カ月かかっています。初期のスケッチから、ワシと人間を解剖学的に融合させてイーグルボーグが誕生した様子がうかがえます。ヘルメットと襟は、約 28 オンス (約 794 g) のプラスチック素材 (PLA 樹脂) と、コーンスターチやその他の天然素材を使用して 3D プリントで造形しています。

Monica Vaverová _eagle_borg

未来的な仕上がりは満足のいくものでしたが、ヴァヴロヴァ氏は、少なくとも近い将来に、3D プリント・テクノロジーが一般的な衣服の製作方法に取って代わるとは考えていないようです。

「3D プリントの主な役割はファッション業界ではなく、ヘルスケアにあると思います」とヴァヴロヴァ氏。 例えば人工四肢が必要な人々にとって、このテクノロジーは人生を変えるきっかけになるでしょう。

とはいえ、3D プリンターで作ったバッグなどのファッション・アイテムは、このテクノロジーがもたらす可能性を広く一般に示す効果があるだろうとヴァヴロヴァ氏は見ています。「クラシックなファッション素材を使った衣服には限界があります」と指摘する彼女が、3D プリント・テクノロジーで気に入っているのは、アイテムをモデルに直接フィットさせたり、縫い目のないアイテムを作れたりする点です。

Monica Vaverová making_eagle_borg

現在、SF コスチュームの新たなプロジェクトに取り組んでいる彼女。このプロジェクトでは、合成皮革に見切りをつけ、3D プリントを直接採り入れており、完成まで 6 カ月を予定しています。

Monica Vaverová _Photo by Lucie Zendlova

その一方で、彼女はデザインのパイオニアやテクノロジーのエキスパートから、コンピューター・テクノロジーを取り込んだ“スマート”な衣服の作り方を学びたいと考えています。

「この分野で活躍している人たちとネットワークを構築し、交流したいと思っています。実際の作業には仲間同士の協力が欠かせませんからね。スマート・ファッションの研究と制作には時間がかかるのです」とヴァヴロヴァ氏は語っています。

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